皆さんこんにちは。千葉県市原市を拠点に、全国でリバースエンジニアリングやプラントの配管工事一式を手掛けている藤田工業です。
以前の記事(工場内での労災事故を防ぐための方法とは? 安全対策のポイントを紹介)でもご紹介したように、工場は非常に労働災害が発生しやすい場所です。その中でも、特に発生しやすい事故の1つとして「転倒事故」が挙げられます。転倒災害を防ぎ、安全に働ける環境を整備するためにも、事前に対策を打っておくことが重要です。ここでは、工場で発生する転倒災害の原因や、有効な転倒防止対策について解説します。
■転倒災害は工場で多発する死傷災害です!

最初に、工場(製造業)における転倒災害の現状について知っておきましょう。労働災害の分類における「転倒」とは、人がほぼ同一平面上で転んだり倒れたりすることを指します。主に床面や通路で転ぶ・倒れる事故を指すと考えていいでしょう。車両系機械などとともに転倒した場合も含みますが、交通事故や感電によって倒れたケースや、高所から転落した場合は別の事故に分類されます。
そして、製造業における転倒災害は、長期的に見れば減少傾向ではありますが、依然として多い状況です。令和4年の労働災害の統計によると、製造業における死傷災害のうち、「転倒」の発生件数は5,757件(21.6%)でした。これは「はさまれ・巻き込まれ」の6,416件(24.0%)に次ぐ第2位の数値です。
一方、死亡災害の主な原因には、転倒災害はランクインしていません。これは製造業以外でも同じです。そのため、転倒は死亡災害にはつながりにくいという見方もできますが、骨折などの大きな負傷につながるケースは多々あります。転倒は十分に怖い事故であり、工場における労働災害対策では、転倒災害の防止に力を入れる必要があるのです。
■転倒災害の3つの原因
 
転倒災害の原因は、大きく3つに分けられます。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
◯滑り
滑りやすい床は、転倒災害の主要な原因の1つです。たとえば、製造工程で使われる水が飛散して床が濡れていると、床は滑りやすくなります。もし油が飛散していれば、床はさらに滑りやすく危険な状態になるでしょう。
また、滑りやすい床材も転倒災害の一因です。床材の種類によっては、表面がツルツルしていて摩擦力が低く、濡れていなくても滑りやすい場合があります。こういった床材が工場で使われるケースはあまりないと思われますが、何らかの理由で不適切な床材が選択されているかもしれません。
さらに、ビニールや紙などの滑りやすい異物が床に落ちていると、従業員が踏んで滑るリスクが高まります。透明で見えにくい異物が床に落ちている可能性もあるため、注意が必要です。
◯つまずき
つまずきによる転倒は、床の凹凸や段差、障害物によって引き起こされます。床に凹凸や段差があると、従業員が歩く際に足を引っかけやすくなるからです。本来、床は極力フラットであるべきですが、工場の構造上やむをえず段差ができていることもあるでしょう。
また、床に荷物や商品が放置されていると、通行中にそれらに引っかかる可能性があります。「ちょっとの間だけ」と思って置いておいた荷物が、転倒を引き起こす場合もあるのが怖いところです。さらに、劣化した床の補修が不十分だと、亀裂や破損部分につまずく可能性があります。
◯踏み外し
踏み外しによる転倒は、階段を通行している時や段差を越えようとした時に発生します。油断して踏み外すケースはもちろんですが、最も注意が必要なのは足元が見えにくい状況です。たとえば、大きな荷物を抱えていたり照明が不十分だったりすると、足元を確認しづらくなり踏み外しにつながります。
また、高いところにある備品を取る場合などに、踏み台を使うこともあるでしょう。この踏み台を踏み外したために転倒することもあります。いずれのケースでも、床があると思っている場所に足を踏み出してしまうため、勢いよく転倒しやすく非常に危険です。特に階段では、一気に下まで転がり落ちるおそれがあります。
■原因別の転倒防止対策

工場における転倒災害を防ぐためには、ハード面とソフト面の両方の対策が必要です。つまり、事故が起こりにくいよう設備の導入・改修を行うのはもちろん、従業員への教育などもあわせて行う必要があります。原因別に転倒災害の防止対策を見ていきましょう。
◯滑り防止対策
一見して特に問題なさそうな床でも、何らかの理由で滑りやすくなっていることはよくあります。以下の対策を講じましょう。
・床をこまめに清掃する
滑り防止対策の基本は床の清掃です。床が水で濡れていたり、油が飛散して汚れたりしている状態を放置すると、非常に滑りやすくなります。こういった汚れはこまめに清掃し、床をきれいな状態に保ちましょう。製造工程などで水や油が飛散しやすい種類の工場では、特に注意が必要です。
・滑りにくい床材を選ぶ、滑り止めシートを設置する
床材そのものが滑りやすいと、たとえ丁寧に清掃されていても転倒災害が発生しやすくなります。毎日歩いていて、何となくツルツル滑る感覚がある場所はないでしょうか? そういった床は非常に危険なので、滑りにくい床材に改修しましょう。滑り止め効果を持つ塗床材を塗ったり、滑り止めシート・マットを設置したりするのも効果的です。
・滑りやすい場所を注意喚起する
滑りやすい場所がある時は、そこをわかりやすくすると転倒災害の防止につながります。滑りやすい箇所の壁に注意書きを掲示するか、掲示板で注意喚起をするといいでしょう。もちろん、他の方法で改善が可能なのであれば、注意喚起をした上で早めに対処するのが最も有効です。
・滑りにくい靴を支給する
靴の種類によっては床との摩擦が不十分で、滑りやすくなってしまう場合があります。滑りにくい「防滑靴」を従業員に支給し、転倒事故の防止につなげましょう。頑丈な「安全靴」であれば、障害物に足を引っ掛けてしまった時の負傷防止にもつながるため、より効果的です。
◯つまずき防止対策
人は歩行中、ちょっとした段差でもつまずいてしまうものです。特に業務中は、他のことに目が向いていてつまずくリスクが高くなります。以下の対策でつまずきを予防しましょう。
・整理整頓を徹底する
作業スペースや通路に物が置かれていると移動の妨げとなり、つまずきやすくなってしまいます。いわゆる5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)や3定(定品・定位・定量)を徹底し、余計な物を床や通路に放置しないようにすることが大切です。
・床の凹凸や段差をなくす
床に凹凸や段差があると、たとえ注意していてもつまずきやすくなります。目に見える大きな段差よりも、小さな段差の方が目立ちにくく危険です。改修工事を行い、徹底的に凹凸や段差をなくし、フラットな床面を作りましょう。
・つまずきやすい場所の注意喚起をする
滑りやすい場所と同様、つまずきやすい場所も掲示や看板によって注意喚起しましょう。補修工事などによって、根本的な開発を図るのが1番である点も同じです。
◯踏み外し防止対策
階段や踏み台を踏み外すと、高いところから落下することになり非常に危険です。滑り・つまずき対策とあわせて、以下のような対策を取ってください。
・足元が見えない状態で運搬作業をしない
大きくて重い荷物を1人で抱えて運ぶなど、足元が見えない無理な運搬作業をしていると、階段や段差を踏み外すリスクが高くなります。台車を使う、複数人で無理なく運ぶ、誘導係を用意するといった、安全に荷物を運ぶための対策を取りましょう。
・幅の広い踏み台を使う
幅の狭い踏み台を使っていると、うっかり足を踏み外してしまう可能性が高くなります。幅が広く作業しやすい踏み台を使うのがおすすめです。踏み台そのものが倒れてしまう事故もよく発生するので、安定性の高い踏み台を選びましょう。
・通行しやすい階段にする
階段の蹴上げ(1段の高さ)が高すぎたり、踏み面(1段の奥行き)が狭すぎたりすると、非常に歩きにくく踏み外しにつながります。また、勾配がきつい階段も危険です。寸法に余裕を持たせ、通行しやすい階段を作りましょう。
・通路や階段の視認性を高める
通路や階段が薄暗かったり、物が置いてあって見通しが悪かったりすると、階段や段差の踏み外しにつながります。適切な照明を設け、整理整頓を徹底して視認性を高めることが大切です。
・階段に手すりを設置する
階段には必ず手すりを設置しておきましょう。万が一滑ったり踏み外したりしても、手すりをつかんでいれば大きな事故につながるのを防ぐことができます。
◯その他
転倒災害は、従業員の転倒に関する理解が不足していることでも発生します。工場で働く従業員は、自分の職場に存在するリスクについてよく知っておかなければならないのです。最近は高齢化の進行により、高齢者が工場で働くケースも増えており、これまで以上に注意が必要になってきています。
そこで、転倒災害に関する教育や啓発活動を行い、従業員の意識を高めましょう。ここまでご紹介してきたような転倒災害の原因・危険性・予防法について従業員が理解すれば、現場の安全性は大きく向上します。
そのための手段として、KY(危険予知)活動やヒヤリハット活動、安全パトロールなどを実施するのも有効です。実際のところ、労働災害の大部分はヒューマンエラー(人為的な要因によって意図しない結果を招くこと)が原因なので、1人1人が責任感を持って行動できるように教育しましょう。
■まとめ

転倒災害は、工場の労働災害の中でも特に注意が必要なものの1つです。転倒災害が発生しやすい環境になっている工場は、作業がしにくいため生産性も低下してしまいます。転倒災害の原因をしっかりと理解し、適切な対策を取ることが大切です。まずは工場内の危険な箇所をチェックし、専門業者に相談して必要な対策を考えてみましょう。
■工場の転倒防止対策をはじめ、安全対策工事は藤田工業にお任せください!

藤田工業は、粉体設備のプラント配管の設計を主に手掛けております。従業員は目利き・腕利きのベテラン技術者ぞろいで、1つ1つのご依頼に丁寧に取り組み、お客様に寄り添った提案をする姿勢を大切にしています。信頼と実績をコツコツと積み上げた結果、大手企業からの設計依頼や問い合わせも承るようになりました。
最近では、工場の補修工事や付帯工事のお問い合わせも数多くいただいております。一例としては、昇降設備がなく脚立を使わざるをえなかった場所に、はしご・安全柵・フェンスなどを設置した実績があります。転倒災害の防止をはじめ、工場の安全対策や生産性向上のための設備改修・補修・修繕などのご要望があれば、ぜひご相談ください。
さらに、リバースエンジニアリング(図面作成や部品複製)も得意としており、図面がない部品や古くて生産していない部品、メーカーが廃業している部品、製造者が不明な部品など、いろいろな部品の複製・復元や図面作成ができます。
全国対応可能で、見積もりから製作まで一貫対応しておりますので安心です。工場の安全対策からリバースエンジニアリングまで、工場のお悩みごとは藤田工業までお気軽にご相談ください。
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