リバースエンジニアリングは著作権侵害になるの? 違法になるケースや注意点を紹介


皆さんこんにちは。千葉県市原市を拠点に、全国でリバースエンジニアリングやプラントの配管工事一式を手掛けている藤田工業です。


リバースエンジニアリングは、既存の製品の構造を明らかにし、図面に起こしたり部品を複製したりすることができます。生産終了やメーカーの倒産などによって部品が入手不能になっている場合、リバースエンジニアリングはとても有効な解決法です。


とはいえ、「それって著作権侵害になるんじゃないの?」と心配する方もいるでしょう。実際のところ、リバースエンジニアリングは著作権侵害に当たるのでしょうか? また、その他の権利を侵害する可能性はあるのでしょうか? ここでは、リバースエンジニアリングが違法になるケースや注意点について解説します。




■リバースエンジニアリングは著作権侵害になるの?



最初に結論をいうと、リバースエンジニアリングという行為自体に違法性はありません。正規のルートで製品を購入した時点で、製品の所有権は購入者に移るため、それをどのように扱おうと自由だからです。製品を分解して構造を調べることも、図面に起こして部品を複製することも、それ自体は基本的に合法とされています。


とはいえ、プログラムのソースコードなどについては、かつてはグレーゾーンといっていい状態でした。しかし、2018年の著作権法改正により「その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」は著作権侵害にならないとされ、情報解析に使用する場合は合法となったのです。


また、工場設備などの工業製品は、そもそも著作物として認められず、著作権が発生しません。著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもの」であって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものを指すからです。大量生産される一般的な製品は、この条件に当てはまりませんから、リバースエンジニアリングを行っても著作権侵害にはならないといえます。


しかし、いわゆる知的財産権は著作権だけではありません。リバースエンジニアリングに関係する権利や法律は他にもいくつかあり、それらに抵触すれば当然ながら違法です。何かを複製する行為というと、どうしても著作権の問題ばかりを考えがちですが、工業製品の場合はむしろ他の権利に目を向ける必要があります。




■リバースエンジニアリングが違法になるケース



リバースエンジニアリングが違法になるケースとしては、主に「特許権」を侵害した場合と、他社の「営業秘密」を不正に取得して行った場合が考えられます。それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。



・特許が取得されている場合

リバースエンジニアリングの対象物が、特許法に基づく特許を取得している場合は、特許権侵害に当たる可能性があります。ただし、特許権侵害は「業としての実施」をしている場合にのみ成立します。


「実施」とは、特許物の製造・販売・展示・輸入・輸出といった行為のことです。製品の分解・解析や、個人的な用途での複製を行うだけなら、特許権侵害には該当しません。一方、部品を大量に複製し販売したような場合は、特許権侵害に当たります。


また、性質の近いものとして挙げられるのが「意匠権」です。意匠権とは、特許権と同じく特許庁に出願すると発生する権利で、工場製品の「デザイン」を守る権利を指します。意匠権を取得している製品を複製すると、特許権侵害と同じく違法行為となるため注意が必要です。



・他社の営業秘密である場合

リバースエンジニアリングの対象物が他社の「営業秘密」である場合は、不正競争防止法に抵触する可能性があります。具体的には、他社の試作品を不正に持ち出して分解・解析したり、得られた情報をもとに製品を作って販売したりした場合が該当します。特許権侵害などとは異なり、分解・解析して情報を得る行為そのものが違法になる点に注意が必要です。


そして営業秘密とは、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たすものだと定義されています。3要件は、それぞれ以下のような内容を指します。


①秘密管理性…秘密として管理されていること
②有用性…有用な営業上または技術上の情報であること
③非行知性…公然と知られていないこと


市販され一般に流通している時点で、③の非効率性には該当しません。つまり、正規ルートで購入した製品のリバースエンジニアリングを行うのであれば、不正競争防止法には抵触しないということです。「偶然入手した試作品の解析を行いたい」というような場合は注意する必要があります。


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■リバースエンジニアリングをする際の注意点



ここまで見てきたように、リバースエンジニアリングは原則として合法ですが、やり方によっては違法行為になったりトラブルにつながったりする可能性があります。そこで、リバースエンジニアリングを行う際の注意点を確認しておきましょう。



・知的財産権を侵害しない

最も重要なポイントは、知的財産権を侵害してはならないということです。前述したように、知的財産権に関する法令としては、著作権法・特許法・不正競争防止法などがあります。リバースエンジニアリングを行う際は、これらに抵触していないことを確認しなければなりません。


まず、複製したい部品が特許を取得していない(切れている)ことや、正規ルートで入手されたものであること、他社の営業秘密でないことなどは必ず確認しましょう。また、工業製品には著作権は認められませんが、リバースエンジニアリングで取得できた情報を第三者に渡したり利益を得たりすると、違法行為になる可能性があります。


まとめると、「情報の取得方法」および「取得した方法の用途」が問題になるわけですが、単純な線引きが難しいのも確かです。場合によっては、知的財産権に詳しい弁護士や弁理士に相談した方がいいでしょう。



・製造責任は実施者、製造者にある

忘れてはならないのが、リバースエンジニアリングによって部品の複製などを行った場合、その製造責任は実施者・製造者にあるということです。部品を複製する際、複製元の部品に何らかの不具合が隠れている可能性は否定できません。これまでは偶然問題が発生していなかっただけだったり、独自のノウハウでトラブルを防いでいたりするケースも考えられます。


そして、リバースエンジニアリングによって部品を複製したり新製品を開発したりすると、オリジナルにあった問題点も引き継いでしまう可能性があります。その結果として何らかのトラブルが発生した場合、責任はオリジナルの製造元ではなく、リバースエンジニアリングを行った側にあるのです。


したがって、リバースエンジニアリングを行う際は、こういった一定のリスクがあることを認識しておかなければなりません。それに加え、法令の理解や企業倫理・技術者倫理が求められます。トラブルを防ぐためにも、リバースエンジニアリングを検討している時は、実績豊富な専門業者に相談しましょう。



》部品の図面がなくても大丈夫? リバースエンジニアリングの流れや業者を選ぶ際のポイントを紹介




■まとめ



リバースエンジニアリングは、2018年の著作権法改正により、著作権の分野では原則として違法ではなくなりました。しかし、特許法や不正競争防止法など、他にも意識すべき法令はいくつもあります。


そのため、リバースエンジニアリングを行う際は、契約内容や法的リスクを十分に確認し、法令を守った上で行うことが大切です。まずは、リバースエンジニアリングの実績が豊富な業者に相談し、十分な打ち合わせを行いましょう。




■リバースエンジニアリングをご検討の際は藤田工業にお任せください!



藤田工業では、主に粉体設備のプラント配管設計を手掛けており、現在はリバースエンジニアリングによる部品の製作にも力を入れています。「図面がない」「すでに生産終了している」「メーカーが倒産した」「そもそもどこが作ったのかわからない」といった場合でも、リバースエンジニアリングを用いれば図面の作成や部品の複製が可能です。


どのようなご依頼も全国対応可能で、見積もりから製作まで一貫対応、小さな部品1つでも喜んで製作いたします。「故障に備えて部品を確保したい」「老朽化した設備を補修して生産性を上げたい」といったお悩み・ご要望がある時は、藤田工業までお気軽にご相談ください。


また、工場の補修工事や付帯工事にも対応しております。昇降設備がない場所へのはしご・安全柵・フェンスの設置など、現場の状況に合わせた最適な施工が可能です。工場の安全対策や生産性向上のために、設備改修・補修・修繕・レイアウト変更などをご検討の際は、ぜひご連絡ください。



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