生産終了部品の供給停止は法律で解決不能?製造業の担当者が知っておくべき法律と対策を解説

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皆さん、こんにちは。千葉県市原市を拠点にリバースエンジニアリングなどを手がける有限会社藤田工業です。


「長年、安定稼働を支えてくれた重要設備の部品が、メーカーから『生産終了』と告げられ、途方に暮れていませんか?」


製造現場の最前線に立つご担当者様であれば、このような事態に一度は直面したことがあるかもしれません。「たった一つの部品がない」というだけで、生産ラインは停止し、納期遅延や機会損失といった甚大な被害に繋がる可能性があります。代替品を探し回っても見つからず、最終的には数千万円規模の設備更新を検討せざるを得ない…これは、もはや他人事ではない、全ての製造業が抱える深刻な経営リスクです。


しかし、ここで諦めてしまうのはまだ早いかもしれません。


この記事では、まず生産終了部品の供給に関する「法律の壁」を理解し、その上で、この八方塞がりの状況を打破する強力な一手、「リバースエンジニアリング」について徹底的に解説します。記事を読み終える頃には、貴社の事業継続を可能にする、具体的かつ合法的な解決策が見えているはずです。




■製造業におけるメーカーの部品供給義務はいつまで?



一般的に、メーカーが設備の部品を保存する期間は「10年」と定められていることが多いです。この期間を過ぎると、メーカー経由での部品調達は困難になります。また、設備のモデルチェンジに伴い旧モデルの部品製造が中止されたり、最悪の場合、メーカー自体が倒産してしまったりと、部品が入手できなくなる要因は多岐にわたります。


このような状況で多くの担当者様が抱く疑問は「メーカーには、部品を供給し続ける法的な義務はないのか?」ということでしょう。結論から言うと、契約に明記されていない限り、未来永劫の供給を法的に強制することは困難です。


契約書に供給期間が明記されていれば、その契約が法的な義務の根拠となりますが、特に取り決めがない限り、法的な「供給義務」は自動的には発生しません。ただし、日本の法律には「信義誠実の原則(信義則)」という考え方があります。この観点から、メーカーが合理的な猶予期間も設けずに一方的に供給を停止した場合、「信義則」に違反したとして損害賠償責任を負う可能性はあります。


そのため、多くのメーカーは紛争を避けるため、一定の猶予期間をもって供給を打ち切る旨を取引先に通知し、取引先が必要とする最終在庫の発注に応じるなどの経過措置を講じることが一般的です。


しかし、産業用機械・設備においては、その保有期間が曖昧であったり、既に終了しているケースがほとんどです。つまり、メーカーの「供給義務はない」というのが、私たちが向き合うべき現実なのです。



・製造物責任法(PL法)の適用は難しい?

次に考えられるのが「製造物責任法(PL法)」です。しかし、この法律によって部品の供給をメーカーに義務付けることもできません。


PL法は、製品の「欠陥」によって利用者の生命や財産に損害が生じた場合に、製造者の責任を問う法律です。例えば、「工作機械の安全装置に不備があり、使用者が指を切断してしまった」といったケースがPL法の対象となります。


部品の供給が停止するという問題は、「製品に欠陥があって損害が発生した」わけではありません。これは製品の保守や修理に関する問題であり、製品自体の安全性とは別の次元の話になります。


したがって、PL法はあくまで製品の欠陥による損害を賠償するためのものであり、修理用部品の供給をメーカーに義務付けるものではないため、この法律によって救済を求めることはできないのです。




■事業継続の切り札!「リバースエンジニアリング」とは?



・リバースエンジニアリングの基礎知識

リバースエンジニアリングとは、既存の製品を分解・解析し、その構造、材質、製造方法などを明らかにすることです。通常の「設計→製造」という流れとは逆(リバース)のプロセスを辿ります。


かつてはノギスやハイトゲージといった測定機器が使われていましたが、現在では高精度の3Dスキャナーが主流となり、精度と作業効率が大幅に向上しました。これにより、図面などの失われた技術情報を「復元」し、同等品、あるいは改良品を製作することが可能になっています。


》リバースエンジニアリングとはどんな技術? メリットや活用シーンをわかりやすく解説



・リバースエンジニアリングがもたらす3つのメリット

リバースエンジニアリングを活用することで、企業は以下の3つの大きなメリットを得ることができます。


メリット1:代替部品の製作と安定供給

最大のメリットは、生産終了となった部品の代替品を製作できることです。現物さえあれば3Dスキャンで精密に測定し、図面を復元できます。 図面化された情報は、必要な時にいつでも製作できる「再設計可能な資産」となり、安定供給のルートを自社で確保することが可能になります。


メリット2:部品の性能向上(アップグレード)

リバースエンジニアリングは、単なる復元に留まりません。材質や設計を見直すことで、耐久性や性能を向上させることも可能です。例えば、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングを施して耐摩耗性を高めるなど、設備の寿命を延ばし、メンテナンス頻度を低減させる「アップグレード」が実現できます。


メリット3:コストダウン

たった一つの部品がないために設備全体を更新する場合と比較して、コストを大幅に抑制できます。メーカー純正品よりも調達期間や管理コストを削減できるため、最大で30〜50%程度のコスト削減に繋がった例もあります。




■リバースエンジニアリングをできるケースとできないケース【法律の観点から解説】



「他社の製品を勝手に解析して作ったら、法律に触れるのでは?」 リバースエンジニアリングを検討する上で、ご担当者様が最も懸念されるのが、この法律(特に知的財産権)との関係でしょう。


結論から言うと、リバースエンジニアリングという技術自体に違法性はありません。 しかし、その目的や方法によっては法律に抵触する可能性があるため、正しい知識を持つことが不可欠です。


・リバースエンジニアリングが認められる主なケース

① 自社設備の保守・修理を目的とする場合

正規ルートで購入した設備の所有権は貴社にあります。また、工場設備などの工業製品は著作物には該当しないため、著作権侵害の心配もありません。このことから、生産終了した部品を「自社の設備を動かし続ける」という目的のために復元し、自社内で使用することは、原則として合法的な行為と認められています。


② 特許権などの保護期間が満了している場合

特許権(出願から原則20年)などには保護期間があります。この期間が満了した技術は社会の共有財産となるため、誰でも自由に利用して部品を製作することが可能です。



・違法となる可能性が高い、または特に注意が必要なケース

① 「販売」目的で複製する

自社利用とは異なり、リバースエンジニアリングで複製した部品を、利益を得る目的で第三者に「販売」する行為は、他社の有効な特許権や意匠権を侵害する可能性が極めて高くなります。これは「業としての実施」とみなされ、損害賠償等の対象となるおそれがあります。


② 不正な手段で情報を入手し、解析する

他社の「営業秘密」を不正な手段で入手し、解析する行為は不正競争防止法に抵触します。営業秘密とは「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3要件を満たすものと定義されています。一般に市販されている製品は「非公知性」の要件を満たさないため、正規ルートで購入した製品の解析はこれに該当しません。


③ 特に注意が必要なケース:製造物責任(PL)

これは違法行為ではありませんが、事業を行う上で必ず認識すべきリスクです。リバースエンジニアリングによって部品を複製した場合、その部品の品質や安全性に関する製造責任は、元のメーカーではなく、複製を行った会社にあります。


》リバースエンジニアリングは著作権侵害になるの? 違法になるケースや注意点を紹介




■まとめ



本記事では、生産終了部品の供給問題について、法律的な側面から解説し、その有効な解決策としてリバースエンジニアリングをご紹介しました。


メーカーの部品供給には法的な限界があり、契約やPL法で恒久的な供給を強制することは困難です。この問題は、どの製造業にも起こりうる深刻な事業継続リスクと言えます。


リバースエンジニアリングは、図面や製造元がない部品を復元し、事業を継続させるための強力な切り札です。「自社設備の保守・修理」という目的であれば、知的財産権の問題をクリアし、合法的に活用できるケースがほとんどです。


「もう古い設備だから仕方がない」「部品がないから高額な更新投資をするしかない」と諦めてしまう前に、ぜひ一度、専門家にご相談ください。不測の事態に備え、信頼できる専門業者と連携を築いておくことが、事業継続の鍵となります。




■部品の複製・復元(リバースエンジニアリング)は藤田工業にお任せください!



千葉県市原市を拠点に、全国でリバースエンジニアリングやプラント配管工事を手掛ける藤田工業は、図面がない部品や生産終了した部品、メーカーが倒産した部品、製造元が不明な部品の製作・複製を得意としています。


弊社では、3Dスキャナーを駆使した精密な図面作成から、現物に忠実な部品複製まで、高度な技術力でお客様のニーズにお応えします。その技術力と対応力は、大手企業様からの設計依頼も多数いただくなど、高い評価をいただいております。


全国どこからのご相談にも対応可能で、お見積もりから製作まで一貫してサポート。「こんな小さな部品一つでも頼めるだろうか」といったご心配は無用です。お客様に寄り添い、最適なご提案を心がけています。

リバースエンジニアリングの他にも、工場の補修工事や安全対策、生産性向上のための設備改修など、工場に関するあらゆるお悩みごとに対応いたします。まずはお気軽に、藤田工業にご相談ください。



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